~不妊期間の長い人の3割は抱えているといわれるほど、不妊と密接な病気です~
本来は子宮内腔にしか存在しない子宮内膜が、子宮以外の場所に発育してくる病気を子宮内膜症と呼びます。
誤解されやすいのですが、子宮内膜症は子宮の病気ではありません。
子宮内膜症は卵巣、卵管、腹膜、直腸、膀胱などによく起こります。
子宮内膜が子宮筋層内に発育してくることもあり、それを区別して子宮腺筋症といいます。
組織は子宮内膜ですから、月経時にはその飛び火した場所で月経と同じように出血します。
その刺激による痛みで月経痛が酷くなり、毎月、月経の度に出血を繰り返すことにより、周りの組織と癒着を起こし不妊の原因となります。
卵管采周辺に子宮内膜症ができると、その癒着により卵子の卵管内への取り込みがうまくできなくなります。
また卵巣にできると卵巣内に古い血液がたまり、チョコレートのようにドロドロとした液の入った嚢腫(チョコレート嚢腫)ができます。
直腸や膀胱にできた場合には、下痢や血便、血尿といった症状が現れます。
子宮内膜症が本当にあるかどうかは、開腹するか腹腔鏡で腹腔内を見るかしないと正確な診断はできませんが、ある程度進行すると内診や超音波検査でも診断が可能になります。
血中のCA125(腫瘍マーカー)が高くなるのが特徴です。
~子宮内膜症の治療法~
妊娠を希望するかどうかで治療の進め方には違いがあります。
不妊でない場合には、手術や薬による治療を行います。
子宮内膜症の薬には、GnPRHアナログ(スプレキュアやナサニール、リュープリンなど)、ダナゾール、ディナゲスト、低用量ピルなど様々な種類があり、排卵を止めたり閉経状態にすることで子宮内膜症組織を萎縮させ、症状を緩和させます。(どの薬も6ヵ月程度の期間用います)
妊娠を希望する場合、治療方針の決定は難しくなります。
チョコレート嚢腫の場合には手術が行われることがよくあります。
この場合、腹腔鏡で嚢腫を取り除きますが、超音波検査ではわからなかった癒着なども見つかり、その治療も同時に行うことができます。
ただ手術によって妊娠の可能性が高まることもありますが、術後に再発することもあり、また手術によって新たな癒着が起こることもあります。
またチョコレート嚢腫を切除する時に、どうしても卵巣の正常部分を一部削り取ることになり、後に体外受精に移った時に採れる卵子の数が少なくなることもあります。
このため、手術をするかどうかは子宮内膜症の程度、年齢、不妊期間、今後体外受精をするつもりがあるかどうかなどを総合的に検討して判断する必要があります。
薬物療法を行う場合には、6ヵ月という期間は不妊の改善を休まなければならないという問題があります。
月経を止めることで子宮内膜症組織が萎縮し、子宮内膜症に関しては随分と良くなることが多いのですが、年齢が高い人の場合はこの6ヵ月間で妊娠する力が落ちることもあり、治療法の選択は慎重にすべきです。
子宮内膜症の場合、癒着によるピックアップ障害や卵管閉塞などの卵管因子だけでなく、子宮内膜症の腹水が受精を阻害するといった色々な不妊要素が起こりえるため、妊娠しづらくなると考えられています。
そのため、最近では子宮内膜症があってなかなか妊娠しない場合には、体外受精を行うことが多くなっています。