次に男性因子の主な障害である「造精機能障害」や「精路通過障害」、また精管は通っていても精液が逆流してしまう「逆行性射精」について説明します。

【造精機能障害】

精子を作る機能がうまく働かず、十分な精子が作られない状態をいい、「精子形成障害」ともいいます。

造精機能障害の場合には、精巣(睾丸)の大きさ(精巣容積)が小さくなり、多くの場合、血中のFSH(卵胞刺激ホルモン)が高くなります。

その原因としては次のようなものがありますが、実際は原因が分からないことが大半です。

●耳下腺炎性精巣炎
流行性耳下腺炎(おたふく風邪)のウイルスにより精巣炎を起こしたことが原因になることがあります。
精子を作る組織のダメージの程度により精液所見も様々です。

●精索静脈瘤
陰嚢の周りの血管が拡張して精巣の温度が上がり、造精機能が障害されている症状をいいます。
この場合には、手術により約半数の例で精液所見の改善が認められます。

●停留精巣
精巣が腹腔内や鼠径部に留まり、陰嚢内に降りてこない先天異常をいい、精子形成が強く阻害されます。

●染色体異常、遺伝子異常
無精子症や重症の乏精子症の場合には染色体や遺伝子に問題があることがあり、採血をして染色体検査や遺伝子検査を行うこともあります。

●脳下垂体異常
脳下垂体ホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)が低いため、精子が作られない場合もあります。
このようなケースには、ホルモン剤による治療によって精液所見の改善が期待できます。

~造精機能障害の治療法~

造精機能障害の治療には二通りの方法があり、まずは精液所見を改善する治療。

もう一つは、今ある精子を有効に妊娠に結びつける治療です。

精液所見を改善する治療には薬物療法や精索静脈瘤の手術がありますが、造精機能障害に非常に有効な薬はありません。

漢方薬やビタミン剤、血液循環改善剤などを組み合わせて服用しますが、効果がなかなか現れないことも多いようです。

そこで現在ある精子で妊娠に結びつける治療が必要になります。

精液所見が少し悪い場合には人工授精が選択され、軽度乏精子症、軽度精子無力症などに有効です。

精子濃度が1mlあたり500万個以下になると顕微授精が必要といわれています。

数が非常に少なくても、生きている精子がいれば顕微授精により妊娠は可能です。

さらに射出精液中に精子がいなくても、精巣内に生きている精子がいれば、精巣内の精子を取り出して妊娠に結びつけることが可能です。

この精巣内精子抽出法による顕微授精を用いることで、無精子症のケースでも数十%の割合で妊娠が可能になっています。

【精路通過障害】

精子を運ぶ精管が部分的に欠けていたり、詰まっていたり、狭くなっていたりすると精子が通過できずに無精子症や乏精子症になります。

原因としては精巣上体の炎症による精管の閉塞、生まれながらに精管がない精管欠損、鼠径ヘルニア(脱腸)の手術の時に間違って精管を縛られてしまった場合などがあります

射出精液に少しでも精子がいれば、それを用いて顕微授精を行います。

精液中に精子がいない場合は、精巣上体や精巣の精子を取り出して顕微授精が行われます。

【逆行性射精】

精液が尿道から射出されず、膀胱側に射出されるのを逆行性射精といいます。

こうしたケースの場合、射精後の精液と精子は射精後の尿に混じって排出されます。

糖尿病が原因になっていることが多いため、内科的な検査も必要です。

自然妊娠は難しいため、マスターベーションを行った直後に採尿して尿中の精子を回収し、人工授精や顕微授精を行います。