~受精にはいたるものの、受精卵が子宮内膜に着床できない症状です~
受精卵は分割しながら卵管から子宮内に入ってきます。
そこで子宮内膜に潜り込み、受精卵と子宮内膜がしっかりつながります。
これを着床といい、妊娠成立となります。
この着床に問題があって妊娠しない場合、原因は大きく二つに分けられ、一つは子宮腔に着床を妨げる器質的な要因がある場合、もう一つはホルモンに問題がある場合です。
~器質的な着床障害~
子宮腔に子宮筋腫が突き出ている場合(子宮粘膜下筋腫)や、子宮内膜にポリープと呼ばれるイボのようなものができていると、その大きさや位置によっては着床しにくくなることがあります。
これらは超音波検査で診断でき、治療としては、子宮鏡を用いてこれらの病変を切除するTCR(子宮鏡下手術)という手術を行います。
また双角子宮や重複子宮、単角子宮など先天的に子宮奇形があると、着床しにくくなるといわれています。
ただし全く問題なく妊娠するケースもあり、なかなか妊娠にいたらない場合には手術を行う場合もあります。
流産や中絶を繰り返すと、子宮内膜が薄くなって着床しづらくなります。
子宮内膜の厚さが6mm以下になると、妊娠することがかなり難しくなり、この場合には今のところ良い治療法はありません。
排卵障害の治療薬であるクロミフェンを服用すると、そのうち15%くらいの人で子宮内膜が薄くなって着床しにくくなるといわれています。
この場合は排卵誘発剤をクロミフェン以外のものに切り替えれば大丈夫です。
~ホルモンの問題による着床障害~
卵胞ホルモンによって厚くなった子宮内膜は、黄体ホルモンの作用により受精卵が着床しやすい状態になります。
黄体ホルモンは排卵後にできた卵巣内の黄体(排卵後の脱け殻である卵胞が変化したもの)から分泌されます。
この黄体の機能がうまく働かないと、黄体ホルモンが十分に分泌されず、子宮内膜が着床に適した状態になりません。
これを「黄体機能不全」といいます。
以前は黄体期の子宮内膜の組織を顕微鏡で調べて診断していましたが、その精度に疑問があり、最近ではこの検査はあまり行われていません。
現在は、黄体期中期の血液中の黄体ホルモンにより黄体機能不全を診断します。
よく基礎体温の高温相の高さが低かったりすると黄体機能不全といわれますが、一概にそうともいえません。
基礎体温でみるよりも、排卵日から次の月経までの日数が10日以下の時に黄体機能不全と考えた方がよいでしょう。
黄体機能不全とに対しては、黄体ホルモンの飲み薬や注射、HCG(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン)の注射などが行われます。