タイミング指導で妊娠にいたらなかった場合、次のステップとして人工授精に進みます。

人工授精は、精液から運動性の良い元気な精子を集め、カテーテルを用いて子宮腔に注入する方法です。

その後の課程となる精子の卵管への進入、受精、着床などは自然妊娠と変わりません。

人工という言葉に抵抗を覚える人もいるかもしれませんが、自然妊娠に近い治療法といえるでしょう。

AIHでは、子宮頸管や子宮腔に直接精子を送り込むことができるため、性交、射精、頸管粘液に問題があるカップルなどに最適な方法といえます。

また精子の状態があまり良くない場合にも、AIHが有効な治療法となります。

より多くの元気な精子を卵子の近くまで送り込んであげることが可能になるわけですから、妊娠の確率も上がります。

また毎周期ごとにAIHをすることが肉体的に可能な点や、体外受精に比べると、費用も1~3万程度で安価にすむ点などメリットがあります。

【AIHが適用されるケース】

○男性側の精子が少ない

○射精障害や性交障害がある

○精子と頸管粘液が不適合

○原因不明の機能性不妊

~排卵誘発剤を併用したAIH~

AIHの1回あたりの妊娠成功率は7~10%で、5~8回行った場合の累積妊娠率は25~30%程度です。

AIHには、自然周期で行う場合と排卵誘発剤を用いる場合があります。

排卵誘発剤を用いると複数の卵子を排卵させることになり、妊娠率は上がります。

自然周期の人工授精の1回目の成功率が7~10%なのに対し、排卵誘発剤を使用すると10~15%になります。

それなら最初から排卵誘発剤を使った方がいいのでは、と考える人がいるかと思いますが、自然周期の人工授精で妊娠できる人が排卵誘発剤を使用すると、多胎妊娠となる率が上がってしまいます。

子宮頸管に問題がある場合には自然周期のAIHを行い、原因不明不妊には排卵誘発剤を使用するという考え方もあります。

これらの方法でAIHを5~8回行っても妊娠にいたらない場合には、AIHでは解消しない問題が他にあると考えられますので、次のステップに移行することを考える必要があります。

~人工授精の進め方~

①排卵日を予測する

タイミング指導と同じ要領で行います。

超音波による卵胞径の計測と尿中LHの測定を行い、排卵日を予測します。

タイミング指導の場合は排卵の2日前~前日が性交をもつベストタイミングですが、AIHはできるだけ排卵に近い時期に行います。

排卵直後でも排卵直前と同じだけの妊娠率が期待できます。

②精液を採取する

当日は夫と一緒に来院します。

夫が一緒に来院することができない場合には、自宅で精子を採取し、専用容器に入れて妻が運ぶことも可能です。

病院の採精室で男性は精子を容器に採取します。

採取された精液は30分ほど室温で液化させた後、※洗浄、濃縮をします。

その処置に30分~1時間程要します。

※なぜ精子を洗浄するの?
精液中には正常な精子の他に、白血球や奇形精子、死滅した精子などが含まれています。

また精液の主な成分である精奬を子宮腔に入れると子宮が収縮して痛みを起こします。

このため精液中から元気な精子だけを選別して子宮内に入れる方が、副作用もなく妊娠率が上がるといわれています。

選別には遠心分離器にかける方法と、培養液と合わせ泳ぎ上がってきた質の良い精子を使う方法とがあります。

③子宮内に精子を注入する

精子の準備が整ったら、カテーテルで子宮腔まで精子を注入します。

麻酔などはせず痛みもほとんどなく、あっという間に終了します。

注入後は5~10分程安静にし、あとは普段の日常生活と変わらずにリラックスして過ごしましょう

人工授精をした日や翌日に性交をして、妊娠の確率をさらに高めるのもいいでしょう。