不妊の改善は二本立てで行われます。

一つは不妊原因に対する治療を行って妊娠につなげる方法。

もう一つはタイミング指導、人工授精、体外受精へと治療を高度なものに上げていく方法。

この二つの方法を組み合わせて治療が進んでいきます。

内科や外科の病気の場合、病気の原因に対する治療を行います。

しかし不妊の改善では最終目的が妊娠なので、不妊原因を取り除かなくても妊娠できればそれで良いのです。

両側の卵管が詰まったままでも、体外受精をすれば妊娠は可能なのです。

この二本立ての治療システムが不妊の改善の選択肢を増やす一方で、不妊の改善をわかりづらくし、クリニック間で治療方針が大きく異なる原因になっています。

また年齢や皆さんの希望によっても治療の流れはずいぶん変わります。

さらに体外受精をはじめとする生殖補助技術は日進月歩です。

胚盤胞移植、アシステッドバッチング、自然周期採卵、シート法など聞きなれない言葉がどんどんでてきて戸惑っている人も多いでしょう。

~不妊の改善の流れを見てみましょう~

不妊の改善を受ける人は、大まかに二つのグループに分けることができます。

一つは不妊の原因がはっきりしていて、治療なしでは妊娠しないグループ。

両側卵管閉塞や無排卵症、無精子症などがそれにあたり、これらの場合は治療法が明確です。

しかしほとんどの人はもう一方のグループ、絶対的な原因はないけれど妊娠しづらいタイプに当てはまります。

子宮内膜症がある、排卵が不定期、精子の数が少ないなどの場合、まずは原因らしきものに対して治療を行いますが、それで必ず妊娠するかというとそうではないのが実情です。

そこで原因に対する治療と並行して、不妊の改善自体を徐々に高度なものへとステップアップしていくことが必要となるのです。

~ステップアップのタイミングも年齢次第~

どのような不妊の改善を受けるべきかを検討するうえで、一番重要なのが女性の年齢です。

女性の妊娠率は20代前半がピークで、年齢とともに35歳頃まで徐々に落ち、35歳を過ぎたあたりから急に妊娠率が大きく低下します。

一方で流産率は35歳頃を境に上昇し始めます。

そのため、どのくらいの期間をかけてステップアップするべきかは、女性の年齢次第といえます。

【女性が35歳未満の場合】

通常のステップアップで大丈夫でしょう。

特に問題がなければ、6~8ヵ月間タイミング指導を受け、その後人工授精を5~8回、それでも妊娠できなければ体外受精を考えるという流れで良いと思います。

ステップアップが数ヵ月遅れても、最終的な妊娠率に大きな影響はないといえます。

ただ何らかの問題があって最終的に体外受精が必要となる可能性が高い場合には、早めのステップアップも考えましょう。

二人目のことを考えると、確率が低い治療を繰り返すのは得策ではないかもしれません。

抗ミュラー管ホルモン(AMH)が低い場合は、残っている卵子が少ない可能性が高いので早めのステップアップを考えるべきでしょう。

【女性が35~39歳の場合】

最終的に体外受精まで考えているのなら、早めのステップアップが必要です。

体外受精の妊娠率はこの年代で毎年数%ずつ低下します。

ステップアップが遅れたために妊娠できなくなるという可能性がでてきますので、むやみに焦る必要はありませんが、体外受精を念頭において治療を受けるべきでしょう。

治療の選択が難しいのは、不妊期間が短いカップルです。

不妊期間2、3ヵ月で「すぐに体外受精を」という人もいますが、この年代でも多くの人は自然妊娠することを考えれば、検査で特に問題がなければ半年程は一般不妊の改善を試してもいいように思います。

【女性が40歳以上の場合】

年齢的に妊娠の確率はかなり低下し、流産の確率が高くなります。

平均的に40歳以上の方は妊娠できるのが25%、出産までできるのが10%、妊娠した人の50%は体外受精による妊娠、20%は人工授精、そして残りの30%はタイミング指導などによる妊娠です。

40歳以上になると、染色体異常のない良い卵子が排卵する確率がかなり減ってしまうし良い卵子でない周期に体外受精をしても妊娠や出産にはつながりません。

もちろん、良い卵子が排卵した場合には体外受精が最も妊娠率の高い治療になりますが、若い人に比べるとそれほど効果的とはいえないのが現実で、37歳以下の場合と比べると半分以下の確率になってしまいます。

40歳以上の場合には体外受精を行いながらも、体外受精を行わない周期にも、通常の性交や人工授精などを行い、たまたま排卵してくる良い卵子を逃がさないことが大切です。