体外受精を行っても、精子の状態が悪ければ受精できません。

採卵までのスケジュール、また胚移植のやり方などは体外受精と同じで、違いは授精のプロセスです。

不妊治療の最終段階に当たるのが顕微受精で、不妊治療の中では最も高額になりますが、特に男性不妊で悩んでいるケースでは、非常に心強い治療法になります。

顕微受精が対象となるケースは、もちろん体外受精で結果が出なかったからですが、精子の数・運動形態に問題がある場合が多いです。

~顕微授精が適用されるケース~

●乏精子症

●精子無力症

●精子奇形症

●無精子症

また体外受精で受精卵が得られない場合の中でも、

●抗精子抗体がある場合

●透明帯が固くて精子が通過できない

これらも試してみる価値が出てきます。

ではなぜ、これらのようなケースで、顕微受精が有効なのでしょうか?

顕微受精は、1個の精子をピペットを使用して、卵子の内部に直接注入する方法です。

体外受精は、シャーレ―の中で卵子と精子を出会うようにするだけで、精子が卵子内に潜り込めるかどうかは精子次第です。

これに対して顕微受精は、人工的に卵子の中に精子を注入します。

顕微授精で一般的に採用されている手法は、卵細胞質内精子注入法(ICSI)という方法です。

なるべく形が形が良く元気の良い精子を1個、直径5ミクロン程度の非常に細いガラスの針の中に吸い込みます。

顕微鏡を使い正確にコントロールして、この針を卵子の細胞質の中に入れます。

針の先が細胞質の中に入ったのを確認してから、針の中の精子を卵子の中に注入します。

精子が入った後は通常の体外受精と同じで、次の日に受精の確認をし、さらにその後発育した受精卵を子宮の中に戻します。

顕微授精も体外受精と同じく、日帰りで行うことができます。

体外受精では、卵子1個に対して10~20万個の精子が必要なのに対して、顕微受精は1個の精子さえ存在すれば可能です。

だから乏精子症や精子無力症の場合でも、元気な精子が1つあれば受精が可能になります。

無精子症の場合でも、顕微受精なら妊娠が可能になります。

閉塞性無精子症の場合は、精液の中に精子が存在していないだけなので、TESEなどの精子回収手術によって精子を取り出して顕微受精できます。

また非閉塞性無精子症の場合でも、精巣の中にわずかでも精子が存在していれば、顕微受精が可能な場合もあります。

こんな風に見てくると顕微受精は究極の不妊治療に思えますが、一方でリスクもあるので、顕微受精をする前に主治医には、リスクについてもしっかりとした説明を受けて下さい。

まず夫が乏精子症や精子無力症などの男性不妊の場合、顕微受精で生まれた子供が、男性不妊の性質を受けつぐのではないか?という報告があります。

また早産・流産などの確率が高いという報告や、先天異常の発症率が若干高くなると書いている書籍もあります。

またこれは体外受精の場合も同じなのですが、排卵誘発段階で卵巣に刺激えることで、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になるリスクもあります。

特に顕微受精を検討する段階になっていれば、おそらくその前に体外受精を何回かトライしたケースも多いはずです。

そうなると度重なる排卵誘発は、卵巣にもかなりの負担をかけているはずです。

※OHSSは場合によっては、女性の命を失いかねない病気ですから、主治医との相談をしっかりとすることが必要です。

※OHSS:排卵誘発剤を使用した不妊治療をしていると、お腹が腫れてくる症状が出ることがあります。

これはOHSS(卵巣過剰刺激症候群)というもので、重症化すると入院の必要が出てきます。

OHSSの症状は重症化すると大変なので、ある程度の知識を持って医師に相談するのが良いと思います。

OHSSが発症する原因は、排卵誘発剤の中でもhMG製剤と呼ばれる注射タイプの排卵誘発剤です。

このhMG製剤を使用した後にhCGと呼ばれる排卵促進剤を注射すると、OHSSが発症することが多いようですね。

クロミッドが原因のOHSSも稀にあるようです。

~顕微授精で受精する確率~

日本生殖医学会によると、顕微授精による受精率は約50〜70%です。

これは、卵子と精子が自然に受精するのを待つ人工授精や体外受精と比べると高い確率です。

ただし妊娠するためには、受精卵が子宮内膜に根を張り、着床が完了する必要があります。

そのため顕微授精で無事に受精できても、残念ながら妊娠しない可能性もあります。