妊娠するには排卵と月経のサイクルがあることが必要で、単に卵巣や子宮があるから起こるわけではありません。
様々なホルモンが臓器に働きかけ、妊娠に向けて緻密な準備をしているのです。
月経サイクルを通して、どのようなホルモンがどんな働きかけをしているのかを見ていきましょう。
~月経とホルモンのメカニズム~
まず月経の時期に、脳の視床下部から性腺刺激ホルモン放出因子がでて「脳下垂体から※ゴナドトロピンを分泌しなさい」という指令がでます。
すると脳下垂体が「成熟卵を作りましょう」と卵胞刺激ホルモン(FSH)を分泌し、卵巣の中にある卵胞に働きかけます。
刺激された卵胞は発育して成熟卵胞となり、卵胞ホルモンであるエストロゲンを分泌します。
このホルモンによって子宮内膜は厚くなり、頸管腺も粘液を分泌します。そして卵胞はますます大きくなり、排卵へと向かいます。
エストロゲンの分泌が十分になると、今度は脳下垂体から黄体化ホルモン(LH) が急に大量に分泌され(LHサージ)、「排卵しなさい」という指示で排卵が起こります。
排卵が終了した卵胞は、潰れて血流が流れこみ、黄体といわれる黄色い脂肪のような塊になります。
黄体はエストロゲンとプロゲステロンという黄体ホルモンを分泌、これら2つのホルモンが、受精卵が内膜に着床しやすい状況を作るのです。
妊娠しないと黄体は排卵後およそ10日で変性し始めます。
内膜を維持してきた2つのホルモンは減少し、排卵後2週間で子宮内膜が剥がれて月経となります。
もし妊娠すれば、黄体はエストロゲンとプロゲステロンの産生を続けるため、子宮内膜は維持され月経は起こりません。
妊娠3ヵ月以降になれば黄体は衰え、その後はエストロゲンやプロゲステロンは胎盤で作られていくことになります。
このように、ホルモンは妊娠準備でもある月経サイクルに大きく関わっているのです。
※ゴナドトロピン
ゴナドトロピンとは性腺刺激ホルモンのことで、脳下垂体から分泌、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の2つの種類があります。
卵胞刺激ホルモンは卵巣内の卵胞を成熟させ、黄体化ホルモンはその卵胞の排卵を起こさせる働きがあります。
ゴナドトロピンを放出させるためのホルモンは、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)といい、脳にある視床下部から分泌されます。
~女性ホルモンのコントロールセンター、視床下部~
無月経や月経不順は、ホルモンの分泌異常が原因になっている場合が多いのですが、このホルモンの分泌量を調整し、ホルモン産生の指令を出すのが※視床下部です。
視床下部はいわば、ホルモンのコントロールセンターとなっているわけです。
そしてこの視床下部には自律神経の中枢もあるため、自律神経のバランスが崩れると視床下部も影響を受け、ホルモンバランスの乱れにつながることも。
心や体にストレスを受けると月経リズムが崩れやすいのには、こうした理由があるのです。
※視床下部
自律神経系や内分泌系のコントロールをし、様々な調節機能をもつ脳の部位。
怒りや喜びなど感情の中枢ともいわれ、ストレスに弱い(影響を受けやすい)ところでもあります。