厳密な意味での不妊は「医療の助けなしには妊娠することのできない状態」のことをいいます。

ただし実際にはこのようなカップルは稀で、一般的には妊娠するチャンスが他の人より少ない状態、妊娠できる確率が毎月25%もなく5%ほどしかないというような「妊娠しにくい状態」のことを指します。

不妊は年々増加傾向にあり、現在日本では夫婦の6組に1組が不妊に悩んでいるといわれていますが、妊娠しにくくしている原因は様々で、当然のことながら原因によって治療法も異なります。

また不妊原因は女性だけでなく男性にもあり、WHO(世界保健機関)の調査によれば、カップルのおよそ半分近くは男性にも原因があります。

~不妊の増加の背景には生活環境の変化や社会的要因が~

WHOは、この半世紀ほどの間に男性が一回に射精する精子の数が少しずつ減少し、生殖能力が低下していると発表しています。

多くの学者や専門家は、大気汚染・海洋汚染などの自然破壊、フロンガスを原因とした宇宙からの有害放射線の増大、高度に発達する文明社会の中でのストレスの増大などを指摘し、これらが複雑に影響しあった結果ではないかといっています。

現代のライフスタイルは大変便利なものになりましたが、一方で運動量が減り、人間の体力や持久力がどんどん低下していくことにつながっています。

豊かになった食生活の裏では、栄養過多による肥満とそれに伴う生活習慣病の増加が問題に、そして食品添加物や農薬などの影響も心配されます。

急激に変化する現代の生活環境が、体の虚弱化や心身の疾病を増大させ、不妊を助長する一因になっていることは疑いようもありません。

~35歳を越えての結婚は「生涯不妊率」が30%超~

女性の場合、加齢とともに妊娠の確率は下がっていきます。

ですから、晩婚化も不妊が増えている大きな要因の1つです。

厚労省の人口動態調査によると、2016年の平均初婚年齢は、男性31.1歳、女性29.4歳。

それに伴い初産の平均年齢も7年前に30歳を越え、2016年には30.7歳になっています。

「その程度なら妊娠・出産に十分間に合うのでは?」と感じるかもしれませんが、こんなデータがあります。

女性の結婚年齢が30歳を過ぎると、一生涯にわたって妊娠しない率「生涯不妊率」が10%を越え、35歳以降になると30%を越えています。

~卵細胞の“年齢”と本人の年齢は同じ~

妊娠するためには、まず男性の精子と女性の卵子が受精することが必要です。

男性の場合、いくつになっても生涯を通じて、精子は作られ続けます。常にフレッシュな精子が生成される訳です。

一方、女性は生まれたときに卵巣内にすべての卵子の元がすでに存在し、生まれて以降に新たに作られることはありません。

つまり、卵細胞は本人と一緒に年齢を重ねていきます。卵子の“年齢”は、女性自身の年齢と同じになります。

“35歳以上”の卵細胞では当然、染色体異常率が上昇し、妊娠・出産に至らないリスクが高くなります。

女性が生まれる前の卵巣には既に、約200万個の卵子の元が全て備わっています。

それが、月経が始まる思春期頃までに約180万個が自然消滅し、約20万個にまで減ってしまいます。

月経がはじまってからは、1回の周期に約1000個、1日に換算すると30~40個も減り続けると言われています。