~不妊原因によって治療法は変わります~

妊娠するためには、排卵、受精、着床をはじめとする多くの課程をたどらなければなりません。

どこに不具合があっても妊娠は成立せず、その不具合こそが不妊の原因となります。

~男性、女性それぞれの不妊原因を見つけだそう~

男性側の不妊原因としては、そのほとんどが精子の問題となります。

精子の数が少ない、または全くいない、運動率が悪い、奇形精子が多いなどです。

精子を採取し検査した上で、投薬による精子の改善を図ったり、または人工授精や顕微授精などの治療が必要になる場合もあります

射精に問題がある場合には、カウンセリングを行ったり、投薬による治療や人工授精などを行ったりします。

女性側の不妊原因は、子宮、卵巣、卵管など様々です。

子宮頸管は排卵前に粘液を分泌して精子の進入を助けますが、人によってはこの粘液の量や質に問題があり妊娠しにくくなるケースがあります。

子宮筋腫や子宮内膜症も、絶対的な不妊原因ではないものの、着床を妨げたり腹腔内に癒着を起こしたりして、不妊につながることもあります。

また、子宮内膜が厚くならないという症状も、病気でなくても着床しづらくなるため妊娠にいたりません。

卵管がクラミジア感染症などによる影響で癒着すると、精子が卵管を通過することができず受精にいたりません。

年齢が高くなると卵子の質が低下するため妊娠がとても難しくなります。

そのため不妊原因を探りながら治療を進めるというよりは、卵子の質がよいうちに妊娠に結びつきやすい治療法を検討することになるでしょう。

また年齢が若くても、排卵障害は大きな不妊原因で、近年では性行為自体ができないケースも増えてきています。

複数の原因が重なり合っている場合もあります。

これらの問題が検査によりはっきりと認識できれば、的確な治療を行うことができ、妊娠への第一歩となるでしょう。

【卵管障害】

ー卵子と精子の通り道である卵管に問題があって妊娠しない場合です。

卵管は、卵巣と子宮をつなぐパイプの役割を果たす器官です。

卵巣から排卵された卵子をキャッチし、膣→子宮→卵管と進んできた精子と受精させ、受精卵を子宮に送る重要な働きをしています。

この卵管が閉塞すると、卵子や精子が卵管を通れないため受精できず妊娠できません。

また卵管采の周囲が癒着すると、卵巣から飛び出た卵子をうまく卵管に取り込めず、やはり妊娠できません。

~障害が起こる原因~

●クラミジアなどの感染による卵管炎や腹膜炎

●腹腔内の手術による卵管周囲の癒着

●子宮内膜症による癒着

また子宮外妊娠により両側の卵管切除を行ったり、避妊手術として両側卵管結さつ術を行ったりした後に妊娠を希望するケースなどもあります。

卵管障害の診断には子宮卵管造影検査と腹腔鏡検査が用いられます

通気・通水検査を行うこともありますが、造影検査などに比べて精度は落ちます。

以前は診断目的の腹腔鏡検査がよく行われていましたが、体外受精の普及によってその頻度は減ってきています。

~卵管障害の治療法~

卵管のどの部分に問題があるかによって治療法は異なります。

●両側の卵管の途中や根元が閉塞している場合

顕微鏡検査(マイクロサージャリー)、卵管鏡(ET)、体外受精の適応となります。

卵管の顕微鏡手術はかなり有効な治療手段でしたが、体外受精が広く行われるようになってからはほとんど行われなくなってきています。

卵管鏡は細いカテーテルを膣から子宮腔を経て卵管に挿入し、卵管の内腔を押し広げて閉塞部分を通す手術です。

かなりの頻度で卵管が通るようになりますが、再度閉塞してしまうこともあります。

体外受精はもともとこのような卵管障害の治療を目的として開発されました。

体外受精では卵管を必要としないので、卵管が閉塞している場合には非常に有効です。

●卵管采が癒着している場合

卵管の出口である卵管采が癒着すると、卵巣から排卵した卵子を卵管の中へうまく取り込めなくなります。

癒着が酷くなると、卵管采が閉じてしまい、卵管に水がたまって卵管がソーセージのように膨れる卵管水腫と呼ばれる状態になります。

この場合、腹腔鏡手術によって卵管采周囲の癒着を剥がしたり、卵管水腫の先に孔をあけて新しい卵管采を作る手術を行うこともありますが、手術後また癒着することも多く、現在は体外受精が行われることが多くなっています。