~排卵障害は、全不妊原因の15%を占めるといわれています~
排卵障害とは排卵が起こらない、あるいは排卵が遅い状態のことをいいます。
女性側に原因のある不妊の40%を占めるといわれ、不妊原因の中でも多いものです。
排卵が起こらないと、精子は卵子と出会えないため妊娠できません。
また月経が始まってから排卵までの日数が長くかかる場合には、自分では排卵の時期が分からず、また排卵の回数も少なくなるため妊娠しにくくなります。
ただし排卵さえ起これば、一回の排卵あたりの妊娠の確率は同じです。
排卵障害の原因には、視床下部や脳下垂体性のもの、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、早発卵巣不全などがあります。
●視床下部や脳下垂体性の排卵障害
視床下部や脳下垂体に原因があり、卵胞を発育させるFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)の分泌が低下するため、排卵が起こりにくくなります。
ダイエットによる過剰な体重減少で、排卵や月経が起こらなくなるのもこのタイプの排卵障害です。
血中FSH値やLH値が低くなることが多いのですが、正常値のこともあります。
治療としては、経口(クロミフェン、セキソビットなど)や注射(HMG、FSHなど)の排卵誘発剤で排卵を起こします。
●高プロラクチン血症
乳汁を分泌するプロラクチンというホルモンの値が高くなると、排卵が起こりにくくなります。
このプロラクチンは産後に多く分泌され、赤ちゃんに乳汁をあげるためにでるホルモン。
乳汁分泌ホルモンともいいます。
授乳中に次の妊娠が起こらないよう排卵を抑制させる働きがあるためです。
胃潰瘍や精神神経科の薬を服用すると、その副作用で高プロラクチン血症となることがあります。
常用している薬がある時には、医師に伝えるようにしましょう。
高プロラクチン血症の原因の多くは、脳下垂体にプロラクチンを分泌する小さな腫瘍ができるためです。
腫瘍が大きい場合は手術が必要になることもありますが、通常はプロラクチンの値を下げる薬を服用することで、排卵が回復し腫瘍に対する治療の必要もありません。
また甲状腺機能低下症があると、高プロラクチン血症になることがあります。
高プロラクチン血症がある場合には、血中の甲状腺ホルモンやTSH(甲状腺刺激ホルモン)を調べる必要があります。
●多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
超音波で卵巣に小さな嚢胞が多く見られ(片側の卵巣に10個以上)、血中LHの値が血中FSHより高くなり、男性ホルモンである血中テストステロン値が高くなります。
また抗ミュラー管ホルモン(AMH)は高値となります。
症状として、男性ホルモンの値が高いためヒゲが生えたり、すねなどの毛が多くなるといった男性化徴候がみられたり、肥満となることも多いようです。
生殖年齢にあたる全女性の10人に1人は多嚢胞性卵巣症候群であるといわれており、病気ではなく体質的なものといえます。
治療によって毎月排卵が起こるようになることはまずなく、妊娠したい時だけ排卵を起こし、その排卵で妊娠するようにします。
クロミフェンなど経口の排卵誘発剤で排卵するケースもありますが、HMG(ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)の注射が必要になるケースもあります。
専用の注射器を用いて、低用量のFSHを毎日自己注射する方法が効果的です。
これらの薬で排卵が起こらない場合には、腹腔鏡手術でレーザーなどにより卵巣表面に穴をあけ、排卵を起こりやすくする処置(卵巣多孔術)を行うこともあります。
また多嚢胞性卵巣症候群はインスリンの代謝異常と密接な関係があると考えられており、そのため糖尿病の薬を服用すると排卵しやすくなります。
●早発卵巣不全
卵巣の中の卵子が40歳よりも前にほとんどなくなってしまい、排卵がおこらなくなった状態をいいます。
ホルモンバランスの問題で排卵が起こらないのではなく、排卵すべき卵子がなくなっているため排卵を起こすことは非常に難しくなります。
この症状を示す特徴として、血中FSHが高値となり、抗ミュラー管ホルモン(AMH)は0に近くなります。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を周期的に服用するカウフマン療法を行うと、稀に排卵することがありますが、妊娠につなげるのは難しいと言わざるをえません。