血液や尿の中のホルモンの量を調べて排卵障害の原因究明や排卵日予測をします~

月経が数ヵ月に1回しかこなかったり、月経周期が不規則な人は排卵が起こりにくくなっていると考えられます。

それでは妊娠しにくいため、どんな原因で排卵障害が起きているのかを調べる必要があります。

排卵というのは様々なホルモンが密接に関係し、互いに情報交換をしながら連携して排卵や着床の準備をしています

ところがそのどこかに問題があると排卵に障害がでてしまうので、ホルモン検査をすれば排卵が起こりにくい原因がわかるというわけです。

原因がわかれば、投薬など有効な治療が可能になりますが、ホルモンごとに適した検査時期があるので、検査は何度か受ける必要があります。

女性のホルモン検査で調べるホルモンは主に6種類、それぞれにどんな役割があるのかご説明します。

1. エストロゲン(卵胞ホルモン)
主に卵巣内にある卵胞から分泌され、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を厚くする作用があります。
女性らしい体つきや肌の美しさを保つ働きもある女性ホルモンです

2. プロゲステロン(黄体ホルモン)
排卵を終えた卵胞が黄体化することで分泌されるホルモンです。
エストロゲンが厚くした子宮内膜の状態を維持して、基礎体温を上昇させるなど、受精卵の着床をサポートする作用があります。

3. FSH(卵胞刺激ホルモン)
脳下垂体から分泌される、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の一種です。
成熟して排卵できるようになるまで卵胞の発育を促します。

4. LH(黄体形成ホルモン)
FSHと同じく、脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンです。
成熟した卵胞からの排卵を促し、排卵後には卵胞を黄体化させる作用を持ちます。

5. AMH(抗ミュラー管ホルモン)
発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。
生理的な働きはまだあまり明らかになっていませんが、卵巣機能の低下や加齢とともに減少することがわかっています。

6. プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)
プロラクチンは、普段は抑制されていますが、妊娠すると分泌量が増え乳腺の発育を促します。
また産後は赤ちゃんが乳首を吸うことでプロラクチンの分泌が増加し、母乳が出るようになります。
一方で授乳期間中は排卵を抑制する働きも持っています。

ホルモン検査では、血液や尿を採取して、上で挙げた6種類のホルモン量を調べることができます。
次のとおり、検査の結果から不妊の原因がわかる可能性があります。

1. プロゲステロンの数値が低い
プロゲステロンが低いと黄体機能不全が疑われます。
黄体機能不全とは、プロゲステロンを分泌する「黄体」という組織がうまく機能していない状態です。

2. FSHとLHの数値が高く、AMHが低い
FSHとLHの数値がともに高く、AMHの数値が低ければ、卵巣に残された卵胞の数が少ないことを意味します。
不妊の改善の進め方を考えるときに、重要な検討材料となります。

3. FSHとLHの数値がともに低い
FSHとLHがともに低値である場合、ホルモン分泌を促す視床下部や脳下垂体などに問題がある、排卵障害の可能性が考えられます。

4. FSHは正常だが、LHとAMHの数値が高い
LHとAMHの数値がともに高い場合は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性があります。
卵胞の発育が遅く、ある程度の大きさまで育ったとしても排卵されず、卵巣内に卵胞が溜まってしまう病気です。

5. プロラクチンの数値が高い
プロラクチンが高値だと、高プロラクチン血症による排卵障害が疑われます。
脳下垂体の腫瘍や、視床下部の機能障害、一部の抗うつ剤や胃薬の副作用などでプロラクチンが過剰分泌されている状態です。

~尿中LH検査は排卵日予測に不可欠~

排卵はLH(黄体化ホルモン)が脳下垂体から一度に大量に放出されること(LHサージ)が引き金になって起こります。

このため排卵の前日に尿中LHが急激に上がります。

そこで排卵が近くなった頃から毎日尿をとってLHを調べていくと、ある日突然陽性になるので、その翌日あたりが排卵日になることがわかります。

~卵巣年齢がわかるホルモン検査~

最近測定できるようになったホルモンに、抗ミュラー管ホルモン(アンチ・ミュラリアンホルモン/AMH)があります。

これにより卵巣にどれくらいの卵子が残っているかがわかります。

排卵誘発剤の注射により、いくつくらいの卵胞が発育してきそうかを予測できるため、体外受精を行う際の卵巣刺激法を決めるのに役に立ちます。

このAMH値が低いと閉経が近づいている可能性があるため、早めのステップアップが必要になります。

不妊の改善を開始した年齢が高い人は早めに受けておきたい検査で、今後不妊検査のうちで最も基本的で重要な検査として広く行われるようになるでしょう。

検査(採血)時期は月経周期のどの時期でも大丈夫です。