【ホルモンバランスを整える】

~ホルモンを司る脳の状態で排卵のタイミングが変わる~

卵子の質を良くする為にもう一つ大切なのは、ホルモンバランスを整えることです。

ホルモンバランスの乱れ=排卵のタイミングの乱れともいえます。

卵子を包んでいる卵胞は、周期ごとにFSH(卵胞刺激ホルモン)の刺激を受けます。

それによって卵巣の中で卵胞のいくつかが大きくなり、卵子が成熟を始めます。

卵胞がちょうど良い大きさ(直径2㎝ほど)になると、それに合わせてLHサージ(黄体形成ホルモンの波で排卵を促す)が起こり、卵子の一つが卵胞を飛び出し排卵になります。

ところが卵胞が十分な大きさに育っていないのに、先走って排卵の命令が出てしまうことがあります。

そうすると未熟な卵子が排卵されてしまいます。

また反対に、排卵の命令が遅すぎる場合も、熟しすぎた卵子が排卵されることになります。

いずれにしろ、こういったタイミングの狂った卵子は妊娠できなかったり、妊娠しても流産しやすい卵子です。

これらの原因はホルモンバランスの乱れであり、脳の問題があると考えられます。

排卵の周期が乱れているかどうかは基礎体温を測ったり、排卵チェッカーで知ることができます。

FSHやLHについては、病院で行われる血液検査の結果でわかりますから、自分の傾向を把握しましょう。

基礎体温の高温期が短い人は、28日周期であっても排卵のタイミングが正しくないことがあります。

~月経周期が整うだけで妊娠の可能性がぐんとアップ!~

排卵が正しい周期に整うだけで、卵子の質が上がり、自然妊娠であっても体外受精であっても妊娠の確率はアップする可能性があります。

良い卵胞が立ち上がるためには、その前の周期の高温層がきれいなことが大切です。

体外受精の場合、排卵自体は薬で起こすことになりますが、その前からホルモンバランスを整えるように心掛けるといいでしょう。

ホルモンバランスの乱れがある人は、なんらかの身体の不調がありコリや痛み、不定愁訴を抱えていることが多いようです。

また睡眠不足や過労なども大きな原因になります。

女性ホルモンが密接に関係する卵巣や子宮、 活発な働きをするには脳下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)と呼ばれる伝達物質が分泌され、血流にのって卵巣までしっかり届けることが重要になります。

そこでまず注目したいのが頸部、つまり首のまわりになります。

ここの血流がスムーズでないと、脳からの指令が子宮まで届きません。

チェックするには、乳様突起(耳の後ろの骨の突起部)のあたりの筋肉を指で押してみると分かります。

周りが硬かったり、押してみて痛かったりする場合は、血流が滞っています。

次のチェックポイントは胸部、横隔膜のあたりで、このあたりの緊張が強く、押して張りや痛みがあったりするようでしたら、やはり血流が悪い状態です。

横隔膜の周りの緊張が強いとその動きを制限してしまいます。

現代人は様々な要因によって呼吸が浅くなっていると言われていますが、横隔膜の緊張は、呼吸が浅く胸やお腹の血液が流れづらい状態を作り出してしまいます。

そうなると上半身と下半身の間に関があるような状態ですから、下半身への血流が減少してしまい、女性にとって大切な子宮まで、しっかりと必要な血流量が供給されづらい状態となります。

結果、女性ホルモンが十分働きにくくなります。

三つ目のチェックポイントはお腹、子宮のあたりで、この辺りが硬かったり、冷たかったりするのも血流の悪い表れです。

卵巣や子宮にある動脈の直径を知っていますか?

実は腹部にある大動脈が約25mmなのに比べ、卵巣や子宮の動脈は1mmと他の動脈と比べてかなり狭く、もともと血液の流れが弱い状態にあります。

ですから、少しの要因でも血流が落ちてしまいます。

血流が良いと50代までその機能が健在であるのに比べ、血流が十分でない場合、30代後半でも閉経してしまう場合もあります。

そのため頭頸部・胸部・骨盤内血行を促進し、子宮までしっかりと血液を行き届かせることが大切となるのです。

~鍼灸による対処策とは~

どうしたらより良い血流を生むことができるのでしょうか?

中医学では体を大きく3つに分け、それらを「三焦」と言い、脳・視床下部のある頭頸部を「上焦(じょうしょう)」肝・脾・胃腸のある胸部を「中焦(ちゅうしょう)」卵巣・子宮・精巣のある腰部を「下焦(かしょう)」と呼びます。

これら「三焦」の血流がスムーズであることがとても大切なのです。

例えば昨今よく耳にするようになった「ホットフラッシュ」。

予期しないタイミングで、頭や顔がカーっと熱くほてり、汗がドバッと出てくる感覚に襲われる症状自体の不快なのに加え、汗をかいた衣服を着用していることで、だんだんと体が冷えて寒くなる…こんな二次的な悪循環をも引き起こしてしまいます。

 成人女性の体に流れる血液量はおおよそ4リットル。

その血液が滞りなく全身を廻ることによって、体の機能がバランス良く働きます。

ところが、ストレスやホルモンバランスの乱れで自律神経が興奮状態にあると血液がしっかりと下半身まで供給されないで、血液が大量に頭頸部へ集まってしまうのです。

その結果としてのぼせたような状態になり「ほてりや頭顔部の異常な発汗」を引き起こします。

「ホットフラッシュ」の症状を軽減するには、逆に全身にバランスよく血流を行き渡らせるということが大切です

では、どのような治療法があるのでしょうか?

耳の後ろに位置する乳様突起のあたりには、翳風(えいふう)などいくつかツボがあります。

そのツボで状態をチェックしたわけですが、ツボは診断点でもあり、反応点でもあると考えられています。

全身の血流をコントロールするツボに「鍼」や「灸」をすることにより、頭に集中した血流のバランスを調整し、治療することもできるのです。

そして、それらのバランスを長期的にキープしていくには、専門的なアプローチをすることが重要となります。

それぞれの症状に有効な治療を、体質改善から一緒に向き合ってくれるのが東洋医学であり、その方法として高い有用性を期待できるのが「鍼」でツボを刺激し、「灸」で体を温める「鍼灸」なのです。

ホルモンバランスを整えるには、日頃から自身で取り組めるセルフケアに加え、「鍼灸」や「整体」など、専門家のサポートを上手に取り入れることでより高い効果を期待できます。